計画同期生産とは何か

計画生産は、そのままの意味でいえば、”計画的に生産する”ことです。ただし、計画的に生産できれば、すばらしいのですが、さまざまな外部要因や、内部の事情などで、多くの場合、計画どおりに生産できない場合が多いというのが現実です。得意先からの飛込みの注文や、仕入先からの納入遅れ、設計変更、設備のトラブル、などなど、計画どおりに実行できない要因は、さまざまです。計画があまりに、実際の生産とかい離してくると、もはやだれも計画のことを信頼しなくなります。つまり、なりゆき生産、やけっぱち生産ですね。

さらに、計画生産は、将来の需要を予測して、なんらかの見込で生産をすることになるため、この見込がはずれると、膨大な在庫になってしまいます。そもそも需要予測なんて当たらない!といった環境にある会社にとって、計画生産は、在庫じゃぶじゃぶ生産になってしまう危険性が高く、その点でもあまり計画生産のイメージはよくありません。ほんとうは、計画生産が悪い訳ではないのですが、とにかく在庫は悪である!という経営者にとって、計画生産は悪者にされやすいという宿命にあります。

これとは対照的なのが、同期生産、あるいは確定受注生産です。後補充型生産ともいわれます。この方法では、計画にもとづいた生産をおこないません。生産はすべて、実際の注文があってから開始します。かんばん方式が有名ですね。これは、自律的なしくみということができ、製造現場で、必要に応じて、必要なときに、必要な数だけ生産します。注文がくるまで作らないのですから、当然在庫はゼロです。すばらしいではないですか! 

ただし、この後補充型の同期生産では、注文を受け手から納入するまでの時間があまりにも長いと、お客様が待ってくれないので、一定量の完成品は作っておきます。つまり、各生産工程には、それぞれ在庫があるわけで、工場全体で見れば、在庫ゼロではありません。実は、このしくみは、受け取る注文の数量が平準化されていればよいのですが、頻度が少ない多品種少量、あるいは変種変量の場合にはかえって在庫が増えてしまうという側面もあります。

ここで登場したのが、計画同期生産です。これは、計画生産と同期生産の両方の利点を併せ持つものといえます。つまり、中長期的な見通しを縦ながら、大ざっぱには計画を立てますが、その計画をそのまま放置せずに、つねに月次、週次、そして日次で見直しながら、計画そのものをすこしずつ修正し、精度をあげていきます。これにより、計画の対象期間が現在に近づけれちかづくほど、より確実なものとなり、関係する多くの業務がこの計画に同期することで全体最適を実現します。

実は、こういった考え方は、大なり小なり、これまでも多くの製造業で実施されてきました。大日程計画、中日程計画、そして小日程計画といったステップをふみながら、計画の粒度を徐々に細かくし、計画を具体化している企業が多く存在しています。ただし、これまでのこうした業務の流れは、得てしてトップダウンであり、情報の伝達経路が一方向である場合がほとんどでした。いちど作成した計画を修正すると、つじつまが合わなくなってしまい、かえって混乱するからです。

結局、最終手段として、現場で臨機応変な対応がとられ、結果として計画と実際がかい離し、本社からすれば、計画とちがう生産をやっていて、工場がいまどうなっているのか、明日なにを生産する予定なのかが見えなくなってしまいます。紙ベースでの指示や、担当者の暗黙知にたよった生産管理では、担当者が見える範囲で部分最適であっても、工場全体でみた場合、臨機応変でダイナミックな計画変更はこれまでできなかったのです。

それでは、ITの進歩のみによって、それが可能となるのでしょうか? こたえはNOです。事実、ERPがこれほど普及しても、ビックデータやクラウドコンピューティングが今後さらに普及しても、生産現場のフレキシビリティは10年前とあまりかわりません。いや、ベテランが退職した分、どんどん退化しているともいえます。計画のロジックと基本となるグランドデザインが必要なのです。

MRP(資材所要量計画)とカンバン方式は、どのように関係し、共存できるか、あるいは共存すべきでしょうか? 製番方式とMRPとはまったく異なるシステムなのでしょうか? バッチ生産などまとめて作る方式と、一個流しなどが共存する工場は、どのようにモノの流れを管理したらよいのでしょうか? 座席予約のような間隔で納期確約ができるとしたら、どのような場合で、どのような制約があるのしょうか?

こうした、さまざまな問に明確に答えられるだけの生産計画や生産管理の知識をもとに、経営のベクトルをしっかりさだめた上で、あたらしい基幹となる計画システムが必要です。計画同期生産は、IT技術を人間力と融合させ、現場力と経営判断を融合させることで、複雑性と不確実性に富んだ時代を航海するための羅針盤となるはずです。

次へ